Lesson2-6 消費者にできること

私たちは、食べ物は人間の命の基礎であるという本来の意味を思い出さなければなりません。今や食料品は単なる商品となり、利益の最大化が追求されています。

有機農家が手間暇かけて生産した有機野菜が、本来の品質問題ではなく、見た目の品質により店頭に並べられずに廃棄されるような現在の流通。これは私たち消費者が行動を変えることで、変革させていくべきなのです。

そのためには、食にまつわる様々な問題解決に消費者からの働きかけが必要です。

 ①価格への意識

オーガニック製品は「お金持ちのための特別なもの」ではない

オーガニックに興味を持つ人は増えていますが、まだ一部のお金持ち、特別な人が食べる贅沢品というような誤ったイメージがあります。農薬や添加物などに対して正しい知識を持ち、健康に有害な物を避けオーガニックを生活に取り入れている人と、とにかく食品は安いものを選択する人との食に対する意識の格差が広がっているのです。

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 オーガニックは本当に割高?

オーガニック商品は、他の商品と比べると割高なように感じます。しかし本当にそうでしょうか?

安全でしかも美味しいオーガニック食材を丁寧に選び出すと、よけいな調味料が必要なくなります。それこそ、生のまま、焼いて塩をふっただけで素材そのものの味が美味しいのです。そのような食事は満足感も高く、自分や愛する人を大切にできているという感覚から幸福度も高まります。

さらに栄養価が高く安全な素材は、私達が本来もつ生命力や自己治癒力を高めることができるので、日々の薬代や将来的な医療費も抑えることができ、その生涯医療にかかる金額の差は食事からの健康を考えることで半分になるとも言われています。また美しく健康的に、生き生きと長生きできるとなれば、オーガニック野菜の日々の数百円、数十円の差は本当に問題なのでしょうか。

多くの化学物質などを使い、安価に簡単に大量生産される商品と、自然に丁寧に作られるオーガニック商品の価格設定が違うのは当たり前のことです。しかし、その価格の背景には農家の努力や流通業者の努力があります。

なぜオーガニックが必要なのかをしっかりと理解することができれば、「安全で良いものは割高でも購入する」という感覚は自然に生まれるようになるでしょう。

②見た目品質への意識

化学物質を多く含む農薬を使用しない有機農業なので、害虫との闘いは非常に手間のかかる仕事であると言えます。基本的には、防虫ネットを張ったり、野菜1つずつにカバーをかけるなどすれば害虫を防ぐことができますが、完璧に排除することは不可能だと言えます。

害虫が野菜表面を這ったことにより、表面に傷がつくこともあります。ですが、品質面では何の問題もない有機野菜であったとしても、流通上は品質不良として扱われることになります。

小売業者へ卸される前に、物流業者の段階でそのような判断が実施されます。ですが、物流業者を責めることはできません。なぜなら、彼らの判断基準は消費者受けが良いかどうか、つまりは我々消費者がそのような見た目品質への判断を実施しているから、ということになります。

美味しさというものは、見た目も1つの要素であると言われていますが、本来の品質を問う指標として機能するのでしょうか。その判断が有機農業の拡大を阻害することに繋がっていないのか、再確認する必要があると言えるでしょう。

 

③流通環境への意識

地産地消

自然と人の健康に配慮した素晴らしい有機栽培の食品でも、長距離輸送となると二酸化炭素を多く排出してしまい、環境への悪影響につながります。

買い物する際は産地を見て、住んでいる土地から出来るだけ近い商品を買うことを心がけましょう。自分たちの地域で作られた物を買うことは、地域の活性化にもつながる重要な行動です。

地元のものを買うということは人にとって捉え方が違うかもしれません。できれば住んでいる町内のものを、県内のものを、それが無理なら九州や西日本など、地方のものを選びましょう。

「フードマイル」を考える

ですが、 国産の有機農産物が少ない状況下で、海外で生産され、日本のオーガニック認証を受けている食品の方が多いという現状もあります。有機JAS認証を取っていれば、オーガニック食品といえますが、輸入する際にかかる流通コストの事を忘れてはなりません。

環境に配慮して育てられた有機栽培の作物が、長い距離を運搬され、二酸化炭素を多く排出することには違和感を感じる人もいるでしょう。

「フードマイル」という考え方があります。フードマイルはイギリス人の消費者活動家でロンドン市大学教授のティム・ラングが1994年に提唱した概念です。食料の重量×輸送距離で計算され、数字が大きくなればなるほど、環境への負荷が大きいことを意味します。フードマイルを小さくするには、近くで採れた農作物を食べる努力をしましょうという考えです。

旬を食べる

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今では野菜や果物の旬が分からなくなるほど、欲しい農産物が一年中お店で手に入ります。旬でない物を売る為には、二酸化炭素を多く排出するハウス栽培をしなければなりません。不自然なハウス栽培では虫が付きやすく、通常栽培よりも多くの農薬が使用されるという傾向があります。

旬のものは安価で美味しく、さらに栄養価も高まります。旬のものを中心に食べる事を意識し、購買行動に変化を加える人が増えると、流通業界に変革が起きることでしょう。

 

みんなの健康を守る意識を持つ

オーガニック製品を選ぶことは、自分や家族の健康を守ることにつながります。自然の恵みを受け、生命力に溢れたオーガニック商品は、他の食べ物よりも栄養価が高いと言われています。

さらに、オーガニックを選ぶことは生産者の生活と健康、最終的にはオーガニックを作るという取り組み自体を守ることにもつながります。有機栽培された農産物への需要が増え、有機栽培が広がれば、農薬での健康被害が防げるようになります。環境に配慮して行うオーガニック農法が広がれば、地球環境の悪化も防げるでしょう。

オーガニック農法は様々な面からみても、次世代につなげることのできる、持続可能な農法なのです。