ここまではオーガニックの歴史や定義・認定機関について世界・日本の視点から解説してきました。
様々な基準や認定が存在するオーガニックですが、そのメリット・デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
オーガニックを選ぶメリット
ここでは、オーガニック食品を選ぶことで得られるメリットについて触れていきます。
前述したとおり、オーガニック食品は、化学肥料や農薬などを大量使用していた時代へのアンチテーゼとして、その需要の高まりを見せたものでした。そんなオーガニックがどのようなメリットを私たちにもたらしてくれるのか、詳しく見ていきましょう。
安全性が高い
オーガニック食品のメリットは、まずは何と言っても、その安全性だと言われています。有機JAS規定にもある通り、化学的に合成された肥料や農薬は一切使われていません。そのため、残留農薬の懸念を考える必要もなくなります。また、その安全性が疑問視されている遺伝子組み換え技術も用いられていないので、消費者も安心して食すことができます。
食の安全性が問題視されている現代では、安心して口に入れることができることは、健康面でも精神面でも大きなメリットだと言えるでしょう。
栄養価が高い
オーガニック食材は自然の中で育つことから、栄養価が高いと言われています。化学農薬を使用しないため、虫食いなどで見た目が良くない物もありますが、ビタミン、ミネラル、その他植物成分が豊富だということが様々な研究で明らかにされています。オーストラリア政府の分析研究機関であるAGALの研究によると、オーガニック農場で育った農産物は、従来の野菜の10倍ものミネラルを含むという結果が出ています。また、アンチエイジングにも効果のある抗酸化物質も通常の野菜にくらべ、最大で70%も多く含まれるという研究も出ているそうです。
そして栄養価が高いだけではなく、健康に被害を及ぼす硝酸塩も少ないという結果も報告されています。
生産者が手間暇をかけ土を作ることで、目に見えない微生物の働きが活発化され、栄養豊かな農産物が作られるのです。
おいしさ
味覚は幼いころからの食習慣によって異なるので、オーガニック食品が他の食品に比べておいしいかどうかを一般的に判断するのは難しいことですが、オーガニック農産物には自然の甘味や野菜本来の旨味があり、おいしいと感じる方が実際に多いのは事実です。また、こういった本物の食材を取り入れることで添加物に慣れた味覚が正常に戻り、食べ物がどんどん美味しく感じるようになるという方もいます。
また、自然に寄り添うオーガニック農業では、生産される土地の風土に調和した作物が出来るので、その土地の人にはよりおいしく感じられることが多いようです。
『The Organic Food Guide: How to Shop Smarter and Eat Healthier』の著書で知られる、スティーブ・マイロウィッツ氏が「オーガニック食品はおいしいか」という調査を行いました。
普段オーガニック食品を食べていない人にオーガニック食品と普通の食品を食べ比べてもらいます。結果は調査した175人中、117人がオーガニックの方が美味しいと答えました。この結果からもオーガニック食品は味も優れているということがうかがえますね。
環境保護につながる
オーガニック食材を積極的に購入し、その市場拡大に貢献することは、結果として環境保護につながります。大戦後に実施していたような化学肥料や農薬の大量使用での大量生産は、その農地への負担が大きく、その土地の生態系に深刻な影響を与えることにつながります。
それに対して、オーガニック・有機農業では、元来自然界に存在するものを活用する持続可能な農業なので、その土地の環境や生態系にも優しいと言えます。また、このような農業が広がり、オーガニック食品の農地割合が増えるは環境保護にもつながることになります。
オーガニックのデメリット
上記のようなメリットがある反面、オーガニックにはどのようなデメリットが存在するのでしょうか。
生産量が少ない
有機農業は大量生産向きの生産農法ではありません。化学肥料や農薬で、一気に土壌を作り、害虫や病原菌を駆除するのとは違い、土づくりから外注退治まで、手間暇かけて生産されています。そのため、生産量自体が大幅に少なくなることがデメリットといえます。
入手チャネルが限られている
これだけ耳にするオーガニック食材ですが、すべてのスーパーマーケットでその取扱いがあるわけではありません。大手スーパーマーケットの一部で取扱いがある程度です。またその取扱い量にも地域差があり、オーガニック農家が近くにあれば多くの食材が並ぶけれども、近くになければ手に入れることは困難です。
また生産量の少なさから、流通量も限られてくるのは必然です。確実に手に入れたいのであれば、オーガニック食材の宅配会社と契約をして定期的に届けてもらうことを視野に入れてもよいでしょう。
価格が高い
やはり手間暇がかかっていること、またその供給量が少ないため、価格は自ずと上がってしまいます。ですが、それに見合った数々のメリットを持ち合わせているので、それらを踏まえると価格相応であると考えることもできるでしょう。
オーガニック食材は、多くのメリットがある一方で、流通面に課題をもつ食材であることがわかります。ですが、そのメリットとデメリットを自分の価値観の天秤にかけてみることで、生活の中に取り入れるかどうか・どのような形で取り入れるのかを決断することができるでしょう。
次のセクションでは、そんなオーガニックを選び、生活に取り入れている人の暮らしをご紹介します。

