アメリカにおけるオーガニックの歴史
現在のアメリカにおけるオーガニック市場の位置づけとしては、世界第一位のオーガニック市場となっており、世界で約800億ドルのオーガニック食品市場のうち、その47%を北米が占めています。欧州全体でも42%であり、欧州全体に匹敵する市場の大きさを持っているのです。
特に、ミレニアム世代(アメリカで1980年代から1990年代に生まれた世代のこと)でのオーガニックの浸透が高く、インターネットの普及に伴う健康・環境への情報への近さ、また、オーガニックがクールだという考え方がSNSでも発信され、若者への浸透を高めている傾向にあります。
大戦後のアメリカ農業
第二次世界大戦後のアメリカでも、欧州同様に化学肥料や農薬を大量に使用した拡大農業が展開されていました。生産能力と生産量の拡大を推し進め、石油化学関連企業も、大学での化学肥料や農薬の研究に資金提供をして研究開発を重ねていました。一方で、非効率な有機農業に対しては批判的な態度をとります。これにより、一層の化学肥料や農薬を使用した農業の発展が進むこととなり、有機農業は影をひそめる形に追いやられたのです。
そのような中、レイチェル・カーソン(Rachel Carson)は化学農薬の無差別使用を批判します。彼女は、これまでの化学肥料や農薬中心の農業・環境や、それを食する消費者への環境に対する影響について、市民の心内を代弁した”Silent Spring”(『沈黙の春』1964年.新潮社)を刊行しました。この本に関しては、化学肥料・農薬メーカーからに痛烈に批判されたものの、市民だけでなく、政策立案者からも注目と支持を得ます。そんな彼女の出版により、「環境保護基金」と環境保護庁が設置されたと言っても過言ではないのです。
国家としての統一基準制定
その後も、発がん性のある植物生育調節剤のダミノザイドを果実の着色向上に使用していることや、遺伝子組み換え食品問題などが顕在化し、有機農業に対する政府の支援を要求する風潮が高まります。これに対して、カリフォルニア州を皮切りに、各州政府が有機農業に対する認証業務を実施していきます。そして1990年には、アメリカ統一基準である「オーガニック食品生産法」が制定され、国家としてオーガニック食品を拡大・保護していく立場を明確にしていきました。
世界第一位のオーガニック市場をもつアメリカでは、2016年にはその市場規模が470億ドル(約5.2兆円)に達しました。食品業界が低迷している現状の中で、オーガニック市場は2015年から2016年にかけて8.5%と高い伸びとなり、ここ10年間では3倍以上に成長しています。これは、アメリカ国内でのオーガニックの高まりの強さが数字となって表れていると言えます。
